「あ、の…もういいから。ありがと」
恥ずかしさに耐えきれなくなって、ぐっと掴まれた手首を引く。
だけど意外に掴む力の強い桜田くんの手から手首は抜けず、戸惑った。
内心おろおろしながら伺うように桜田くんを見上げると、じっとこちらを見る桜田くんと目が合う。
…そう、桜田くんの目は手首の方じゃなく、確実に私を見下ろしていて。
ドクンと大きく、胸が高鳴った。
「桜田、くん…?」
「…ん?」
「あの…手、離してほしいんだけど」
ずっと見つめてくる桜田くんの瞳に目のやりばを失う。
ど、どう反応すれば…?
そんな私の訴えもきかず、桜田くんはああ、と手首は掴んだまま水道の水だけを止めた。
「…ごめん、考えごとしてた。対処法とかは俺もあんまり分かんないんだけど、とりあえず湿布とか貼っとこうか」
「…だ、大丈夫?」
「疑うなよ~たぶん大丈夫だから。俺を信じなサイ」
満面の笑顔で胸を張る桜田くんに、私も小さく笑う。
ちょっぴり頼りなさげなのがどこか可愛く見えた。

