「あー…もうやだっ…」



小声で呟いて泣きそうになっている私を、美月ちゃんが審判役のチームから心配そうに見ているのが分かる。

私も早く審判役に回りたい…

あんまり害ないし…


そう、現実逃避していたのがいけなかった。

もともとトロくさいのに違うこと考えてたもんだから、ボールに意識が回らなくて。



「白木さんっ!!ボール!前見て!!」

「え……っ」



きゃ、とか
わ、とか

声が漏れる前に。

反射的に出した手にボールがぶつかって。

指に鈍い痛みが走った。



「つっ……」

「愛菜ちゃん!大丈夫!?」



審判の場所から美月ちゃんが駆けてくる。

先ほど叫んだ竹下さんも私の方へ走ってくると、乱暴に私の手首を掴んで持ち上げた。

そして指を観察して。



「…つき指してるかも。保健室で冷やしてきた方がいいわよ」

「あ、うん…」

「あたし一緒に行く。莉愛ちゃん先生に言っといてよ」

「分かった」



莉愛(りあ)ちゃん、とは竹下さんのことで。

その竹下さんはすくっと立ち上がると先生の方へ向かって歩き出した。