宮岸さんは
耳まで真っ赤にした
顔をぷいっと背けた。
「宮岸さん、照れてる」
私がそう言うと
「照れてません」
と言って、
いきなり私をガバッと
包み込んだ。
「きゃっ…!」
私がびっくりして声を
あげちゃうぐらいの
突然の抱擁は
強くて優しくて暖かかった。
きっと、
彼の照れ隠しだったんだね。
私は、彼に
抱き締められたまま
彼に向かってこう言った。
「私ね、本当に
彼氏と別れたんだよ?」
彼は、一瞬黙って
抱き締めていた
腕の力を少し緩めて
「…え?」
と言って、私の顔を
見つめ直した。
私は彼の顔を見上げて
ニコッと笑顔を見せた。
「二週間前に、
ほんとにお別れしたの。
ほんとに、ほんとだよ?
号泣されちゃったけど
私は泣かなかったよ。
だって…」
私が、言いたかった
その続きは、
『だって、宮岸さんが
大好きだから』
って言葉だったんだけど、
最後まで言わせて
もらえなかった。
彼が深い深いキスを
浴びせてきたから。
そして、先に
彼に言われちゃった。
「姫夏、愛してるよ」
