姫のさがしもの。



宮岸さんはハンカチを
ポケットから出して

私の涙をそっと拭った。



「姫夏。違うよ?


俺といたら、
街も堂々と歩けない。

川辺に隠れて
会うことしかできないよ?


買い物に行って、
電車に乗って、
映画を観て、
有名なお店で食事して

手を繋いで梅田の街を
歩いて…


そんな些細な希望が
叶わないんだよ?」



宮岸さんが
悲しそうな顔をする。



「…そんなの
構わないもん!


だったら、誰もこない
隠れたお店で食事する!

私の地元も
宮岸さんの地元も
たぶん安全だし…

手つないで
地元デートぐらい
できるもん」



そう言って私がプイッと
顔をそらすと、

宮岸さんは困った顔をした。



「そんなデートで
姫夏が満足してくれるなら

これからも
もっといっぱい
デートしよう。

な?」



私を宥めるように

宮岸さんは
話しかけてくる。



「でも、

宮岸さんは

私を彼に
譲っちゃうんでしょ?

微妙な関係が
いいんだもんね?」



私は口を尖らせて
意地悪な言葉を
彼に浴びせかけた。



彼は、困った様子で
頭を掻いた。



「譲るつもりなんか
ないんだけどな。

だけど、
姫夏が決断してくれるまでは
俺は待つだけだから。

…我慢できなくて
毎回キスしちゃったりして

あぁ、今日も
我慢できなかった…
なんて反省するけどね(笑)


でも、俺は

姫夏が俺を選んでくれるまでは
これ以上手は出さないって
決めてるから。

だから…

せめてこのままで
いいから

こんな微妙な関係でも
俺といてほしいって
言いたかったんだ。」



「…うそ・・・。

だってお互い望んでるって…

私、望んでないもん!」