姫のさがしもの。



栄太は、静かに
問いかけた。



「姫夏は、

俺と別れたいの?」


栄太のそのストレート
すぎる問いかけに

私は少し戸惑った。




別れたい
と答えれば
少しだけ嘘になる。

今でも、まだ少し
ほんとは迷ってる。


でも、

このまま付き合っていきたい
って答えたら

嘘になる。




「・・・・・。」



私は少しの間、
答えられないまま
俯いていた。




「姫夏?

別れたいの?」




栄太はもう一度
私に問いた。





小さく頷く私。



「…うん

別れなきゃ
駄目だと思う…」



宮岸さんの為にも
栄太の為にも

そして、私自身の為にも。



栄太は、

下唇をギュッと噛みしめた。



「…俺・・・

頑張るから。

頑張るからもうちょっとだけ

待ってほしい。


姫夏にもう一度
好かれるように
頑張るから」




すがるような栄太の
目を見ていると

うまく説得できない。



「頑張る…?

栄太はいっつも優しくて、
これ以上何も
頑張らなくていいと思うよ…」



「だって頑張らなきゃ
姫夏は俺から
離れていっちゃうんだろ?」



「栄太…。」


つい、迷いが出てしまう。


だめ。
キッパリと断らなきゃ。


「…頑張らないで。

頑張っても
もうこの気持ちは
変わらないの。

ごめんなさい」




「なんで…

なんで姫夏が謝るんだよ…」



泣きそうな栄太の顔。

見ているのが辛い。



「…ごめん。

だって私が悪いから。」



すると、

栄太は深く悲しみに満ちた
目をしてこちらを
睨むような鋭い
目つきで見上げ、

静かに聞き返した。





「…ほかに好きな人、

できた?」