姫のさがしもの。



ふと目を覚ますと
午前9時20分。



…やばい!


9時半始業なのに
完全遅刻だ…


あたふたとする私。




…ふと見ると
床に巨大な物体

いや、巨体が。




「…宮岸さん!?」



すると宮岸さんは
寝ころんだまま



「起きた?

まさか会社行こうとか
思ってないよな?

休まなきゃ
だめだからな!

ちゃんと病院に
いってきなさい!」


と私に背を向けたまま
言った。



…図星。


だって、
今日はたくさん仕事があって
休んでる場合じゃないし。



「もう、大丈夫だよ!

てか、なんで
宮岸さんいるの?

鍵渡したよね?

私が寝たら帰るって…」


「いや、その
つもりだったんだけど

また姫夏が途中で
目を覚まして苦しんだら
どうしようと思ったら

帰れなかったんだわ」


宮岸さんは
ゴロンと寝返りをうって、
横たわったまま
こちらを向いた。



よく見ると宮岸さんは

クッションを枕がわりに、
自分の上着を掛け布団がわりに
して寝てたらしい。



「でもなんで床に…

そんな固くて冷たいとこに
寝てたら宮岸さんまで
体調悪くなっちゃう!

あ…

私が蹴り飛ばしたとか…?」



「ははっ!違うよ。

姫夏が狭くて
寝にくいかなと思って。

俺はどこでも眠れるから
気にしなくていいよ。


それより、早く
課長に休む連絡いれて!

ほら、早く!」



「え…?えぇ…!?」



なんだか訳がわかんないまま
言うとおりに

坂井課長に
『本日はお休みします』と
メールを入れた。

…というか、
入れさせられた。




「はい、よくできました。

じゃ、これから
病院いくよ。」



宮岸さんはヒョイッと
起きあがって
そう言ってから

私の身体を抱き締めながら
私を立ちあがらせた。