「しんどい時に
俺の心配なんて
しなくていいの!
姫夏、今から俺
会社すぐに出るから
20分だけ
頑張ってくれな?」
宮岸さんはそう言って
電話を切った。
…宮岸さん
なんて優しくて
かっこいいんだろう。
それとも、
少しは愛されてるって
自惚れてもいい?
私は、宮岸さんが
今から来てくれると思うと、
不思議と苦しさは
半減した。
―そして20分後
ピンポーン
チャイムが鳴った。
バタバタバタと
駆け足で玄関に向かう私。
ドアをガチャリと開けると
スーツ姿の宮岸さんが
現れた。
宮岸さんはフワリと
軽く私を抱き締めて
「大丈夫か?姫夏」
と言った。
私は彼の腕の中で
コクコクと頷いた。
「おじゃまするよ」
そう言って
私の肩を抱いて
部屋へと入った宮岸さん。
「姫夏は寝てて」
そう言って私を先に
ベッドに入らせて
彼はスーツの上着を脱いだ。
それから彼は
「俺もベッドに
入ってもいい?
姫夏が眠ったら
帰るから。
鍵2本あるなら1本貸して」
と言った。
私は、横たわったまま
手を伸ばして
予備の鍵を1本彼に渡した。
彼はそれを受け取って
そっと私のベッドに
並んで横たわった。
シングルベッドに2人寝るのは
ちょっぴり窮屈だけど
宮岸さんの腕の中に
すっぽりと包まれていると
その窮屈さが
丁度いい気がした。
なんだか安心して
ウトウトと眠気が
襲ってきた。
宮岸さんは
ずっと私の髪を
そっと撫で続けた。
そのリズムが心地よくて、
私はついに
安堵の中で夢の世界へと
落ちていくことができた。
