「夜中に頭痛で目が覚めてね
そしたら息苦しくなってきて
救急車呼んだの。」
グスングスンと
泣きながら答える私。
「それで…
今は大丈夫なの?
入院とか…?」
栄太は心配そうに
聞いてくれる。
「ううん、ただの過呼吸だから
早く帰って寝なさいって。
だから今、タクシー」
まだ泣きながら
私は栄太に説明した。
「そっか。
とりあえず
大きな病気じゃなくて
よかったよ。
もう大丈夫?」
栄太は私を宥めるように
優しい声で話しかける。
「今は苦しくないよ。
でも…不安。
帰ってから
また苦しくなったら…」
私はまた
グスグスと音を立てて
泣き始めた。
栄太は慌てたように
答え返す。
「姫夏。落ち着いて。
大丈夫だから。
眠れなかったら
また電話しておいで。
ね?大丈夫。
寝たらすぐ治るよ」
栄太は子供をあやすみたいに
私を落ち着かせようと
説得する。
「うん…わかった。
とりあえず電話切るね」
私は栄太との
電話を切った。
なぜ、すぐに電話を
切ったかって…
なんだか
モヤモヤしたから。
…栄太の心配する気持ちとか
私を落ち着かせようと
してくれる気持ちは
うれしいんだけど
なんだかさっきの
医者とおんなじようなことを
言うんだもん。
…医者も栄太も
結局は私の不安なんて
わかってくれない。
私の苦しみは
私自身で戦うしかないんだ…。
なんだか、
今日二度目のがっかり。
一度目は、
医者なら治してくれるという
期待を裏切られたガッカリ。
二度目は、
栄太なら不安や苦しみを
わかってくれるっていう
期待を裏切られたガッカリ。
