―北川姫夏 24歳。


夏の姫と書いて
「ひな」と読む。



でも、

私は、強烈な暑さに
汗ばむ夏よりも

断然、春が好き。





桜並木をくぐり抜け、

やわらかな風を感じながら
通勤する

4月の訪れ。





中田さんの送別会の日から


気がつけば、

もう4か月。




彼のいない
オフィスの風景にも、

ようやく慣れた。




中田さんがいなくなってから、

私の業務は日に日に
過酷を極めていて



家の扉を開くのは

毎日、夜中。




でも、

そんな生活にもそろそろ
慣れてきた。