ピィチチチ ピィ ピィ。スゥが鳴く。


朝だ 龍華はケータイのアラームにしてる讃美歌もすんどめにして、ゆっくり起き上がった。


最近 身体の具合がオカシイ。
病弱だけど、違和感が溜まるようになったのは… 専門学校で昼夜を問わずに動いていた頃からだ。
この異変が 後々大きな大きな変化になるとは… まだ気付かない…。


「んー…。おはょ。スゥ。今日だね!!!たのしみ。」龍華は鳥籠を開け、スゥを撫でた。スゥも嬉しそうに甘がみする。


龍華は仕度を整えて、居間に行き、挨拶をし 朝食を摂る。


母親が「引っ越し屋さんは10時よね?お母さん、片付けたり着いて行くからね。」と言う。


兄は「今日かぁ…。淋しくなるけど、頑張れよ。」と 龍華の頭をクシャクシャ撫でる。

父は… やはり無言でテレビを観ている。
龍華なんて存在していないみたいな いつもの素振りで…。


朝食を終え、自室に戻る途中… 一言。
父に「いってきます。」と 言ったが、無反応だった。


父は いつでもそうだ。
いつでも 龍華に関心がナイ。はなしもしない。
ましてや… 引っ込み思案で、いじめられては泣いたり すぐに身体を壊す龍華に。


「家族3人の方が楽しかったなぁ。存在しなければいいのに。」とか「20になったら出て行け。」とか 母は冗談だとフォローするけれども、必要以上に傷付いた。あれ以来… 更に父親嫌いになって引き籠もる様になった。


それが 今日やっと、鳥籠から出られる鳥の様に 干渉もなく、窮屈で窒息しそうな日々から出られる。


それだけで、楽しみだった。シアワセだった。
自分だけの世界が築ける… そんな希望と夢でいっぱいだった。