動かない男に、一歩と近づいた。
走らなかったのは男を殺すことにためらいがあったからだ。
こんな良い腕の持ち主を殺してもいいのかと迷う。
男に近づくたびに眉間にシワが増えていった。
そこに雨のせいで赤褐色の髪がおりてくる。邪魔、邪魔、邪魔だ。
邪魔。そうだ、金髪は敵だ。
男を片づけたら、フェンに手伝ってもらって髪を切ろう。
そうとくれば早く、終わらせなければ。
忘れないうちに剣を振った。
無論、座っている金髪めがけてだ。
「…っ、りゃ!!」
「だから、俺は……」
「──あ!?」
想定外のことが起きた。頭が追いつかない。マヌケな声がでたのは認めよう。
「だから、俺は“生きていける”んだ……!」
闘志、とでもいえる力の入った目。


