余裕な様子で、三日月をかたどる口元に。
「“神を呑み込む大顎”(フェンリル)よ。“勝利を決める者”(オーディン)の名は常に我らにあることを忘れるな。
ククッ、最高のフィナーレの一塩となってくれよ、“総団長”。
君以上の“可愛い奴”が私を待っているのだから」
返そうとしたフェンリルの言葉は、血にまじって音に成り下がった。
最後に彼の瞳にあったのは──ビギナー。彼は笑っていた。
──赤も視えた、それは普通なら、自分の体外からでることのないものだ
──馬から落ちた。もう起き上がれなさそうだった
考えて、鈍くなる瞳で彼は、去っていく背中をみていた。
あれがこの先、自分のいなくなった『オリジン』に関わらないことを願う。
「ッ、シュ…」
自分の後釜は、彼がいい。
補佐にエディとアレックスを今まで通りつければ、きっと、戦争のない穏やかな優しさは訪れてくれるはずだ。


