「知っているかい、フェンリル。絶対たる弱点がない神様でもね、嫌いなことがあるのだよ」
返事のかわりに馬ごと体を向けた。
こう改めて向かい合うと、やはりこいつとは関わりたくないと強く感じる。
フェンと違って饒舌な男は続けていた。
「かのオーディンもきっと嫌いだったのだろう。だからこそ、アレは天から地に降りて虐殺を始めた。
ククッ、ああ、よく分かるな。“楽しい”からねぇ。いつだって、そう――」
血をまとう彼の武器、鎌の先は。
今にも雨を落としそうな、空。
「神も人も、退屈が嫌いだからこそ娯楽を求め。真の娯楽を求める者は常に人とは違う神々の“遊び”を追求すべきなのだよ」
慢心した表情の言う意味が頭で整理される前に、フェンは頭から追い出す。


