笑みが漏れるのを防ごうと唇を噛む。なんだか、やっと男の本気が見えた気分で嬉しかった。
だから『もっと』という感情が表れてしまうのかもしれない。
素直に、それに従った。
「お前、それが全力かよ。違うだろ?」
こんな安い挑発に乗ってくれる彼は、とても親切なのだと内心、苦笑。
「っ、ふざけやがって……!」
そうは言っても反撃はしてこない、今度はロッシュが押している。
このまま押し切って剣を弾いてしまおう。頭の中での予行練習は済んだ。実行に移すだけだ。
──そうして剣が弾かれる半瞬前、男は沈黙を破った。
「何なんだ、よ……。騎士って……」
構わずに、反撃されると面倒なので蹴飛ばす。
吹っ飛んで、離れた死体の山にぶつかっていく男。


