「フェン、俺──」
少数の者をフェンリルの周りに置いてあるだけなのに、ロッシュは彼らを置いて行きたいと思ってしまった。
「…好きにしろ、私はここにいる」
「絶対、カタついたら戻ってくるから。それまではここにいてくれよ」
2つの背を眺めながらフェンは静かに祈る。
神へ。
もしこの声が届くのなら、彼らを、守ってくれ。
ロッシュが走りだせば、エディはさらに加速した。
彼の馬は隊長であるロッシュより速い。
それがわかっているからこそ、がむしゃらに右手で手綱を持っていた。
左は背中にある愛用の剣をぬく。それは、通常の何倍も大きく、持ち主の腰を越すほどだ。
「おら、オラオラぁ!どけえっ!!」
物言わぬ相棒で、オーディンだと思われる見慣れない者は片っ端から斬った。
部下にトドメを刺そうとするヤツは、背中から斬る。
前を行くエディに向かうヤツがいればそれもまた、斬る。


