この2人ほど緊張感のない者はなかっただろう。
「だったら、走って戦ってこい!」
「なんだとこの野郎!? 俺は総団長であるお前を守るためにだな、」
言いかけ、口を閉ざす。
彼の視界のスミで見慣れたものがちらついていたのだ。
その人物は返り血なのか、馬も乗り手も所々赤く染まっていた。
なにやら焦った様子でこちらへ走ってきている。
「隊長、隊長!」そう叫びながら。
「…エディ?」
来たのは、エディこと第一部隊の幹部だった。
「俺、俺、見たんです」
「あ?どうした?」
スピードが出ている馬を止めるのに手間取りながら、彼の勢いはまだ止まらない。
「ひ、1人で百! 1人で百人も相手する──殺すような、そんな勢いのあるやつがいて…!」
「なんだそれ、すげえな!たった1人で、か! どこにいるんだよ?」
「俺らの部隊の、あたりに!! 案内しましょうか?」


