「なに、言ってるかっ、さっぱり聞こえねぇが、俺は戻る!」
どうやらフェンの静かな声は馬足音に消されたらしい。
彼は軍の並びが崩れないよう、馬のスピードを器用に緩めた。やがて、定位置にすっぽりはまる。
「「───!!」」
形容しがたい大きな叫びなのだが、これだけ人が集まればもはや、騒音というほか無かった。
もうしばらくすれば両軍がぶつかるというのに、ロッシュは何を思い出したのか勢いよく馬を走らせる。
嫌でも聞こえるような声で告げた。
「フェン──じゃない、総団長! ちょっと来い!」
そうして2人と部下の何人かが後退し始めた、数秒あと。
両軍は、衝突した。


