「──全員で生きて帰って、酒飲み明かすぞー!!」
「「オオーっ!!」」
ふざけた言いぐさは兵たちの緊張を少しでも和らげるためで
「怯んだら最後、だからな!」
恐れを見ようとしない兵たちは、自国を、仲間を守るために、前へ進んでみせた。
ようやく敵の顔が確認できるようになった、と思った。
フェンリルは最終確認と題して、不安を拭うためによくよく兵数を見比べる。
心なしか、こちらの方が多く見てとれた。
「………よく、分からないが。少しばかり、少ないか?」
「団長っ、なにか、言ったか!?」
激しく揺れる馬のせいで、途切れ途切れになる言葉を精一杯つむぎ、ロッシュは再び定位置よりも前へ出る。
「…さすが地獄耳、聞こえたのか。 いや、特に何の意味もない。気にするな」


