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「お?あれがそうなんじゃないか、総団長」
あれからも軍の緊張は高まる一方だったが、彼だけは違っていた。
武者震いが止み、おどけた口調。──いつもの調子だ、完全にリラックス、否、自分のペースを持てつつある。
「そうだな。数は五分五分くらい、か」
目を細め、遠いシルエットをつかみながら安堵する。
兵数が同じならば、勝敗は兵の質、それから勢いで決まると言ってもいいだろう。
と、そこで何か聞こえた。
微かだったがどうやら向こうの軍からのようで、何だか知らないが雄叫びをあげているよう。
ロッシュはそれに目を輝かせた。
「なぁ、フェン!向こうに対抗してこっちも何か叫ぼうぜ!」
兵たち、目が点。
彼らには自分らの足音の他、何も聞こえなかった。
それは総団長である彼も同じのようで、今度は彼が困惑気味だ。
「向こうが何か言ったのか、地獄耳隊長」


