朝のトレーニングを終えた私が休憩室へ向かおうとした時、普段のどかな基地内に言い表せない緊張感が張り詰めているのを感じた。
その緊張感の発信源をバスルームの方と感じとった私はまっすぐにそちらへ向かった。

職員用のバスルームの入り口には既に数人の職人が集まっている。

基地内の警備チームのメンバーは事態の重大さを表すように基地内を走り回っていた。
私は、入り口を固める若手の警備員を押しのけ中へと入って行った。

「あ、困ります」警備員が何か言った気がしたが、無視した。私達ウーメンズのメンバーは基地内ではそれなりの特別待遇を受けている。基地内で私達に面と向かって命令できるのは、博士と数人の幹部職員だけだった。


同時に30人まで入れる豪華なバスルーム。お湯は地下500mから引き上げている天然温泉だ。
マッサージ機器などが備え付けてある脱衣所を抜け中へと入っていくと、先に入っていたレッドがこちらに気付いた。

目だけで言葉を交わすと、視線を中に移した。中では博士が誰かを抱えている。

「加奈子ぉぉぉぉ・・・」

肌の色の白さとそのしなやかさ。一目でそれがピンクだとわかった。

一糸纏わぬ姿のピンクは、博士に抱えられたまま手足をダラリとさせている。

博士の様子からも、そして基地内では禁止されているメンバーの本名で呼びかけていることからも、その肉塊に魂の宿っていないことは理解できた。

レッドの視線を感じて振り返ると、目で「こちらへ来い」と言ってきたので脱衣所へと向かった。