天使のいいなり～僕と天使と聖なる夜

笑い声がだんだんと小さくなり、また永瀬が静かに口を開いた。



「だから俺…、全然気づいてやれなかったんだ。………光莉のこと。」


永瀬の彼女。
写真の中の彼女が悲しそうに感じたのは、俺の気のせいではなかったんだ…。


「俺が、光莉のこと追いつめたんだ。光莉があんな嘘ついたのは、俺のせいだ…。」




『嘘』

それは、彼女が里緒に対してついた嘘。

彼女の目から見ても、里緒の永瀬へ対する気持ちは一目瞭然だった。
それは永瀬に対しても言えること。

里緒が高２のときのことらしい。

バレンタインの日に永瀬に話しかけている里緒を見て、里緒が告白すると確信した彼女。
里緒に告白させないように、違う待ち合わせ場所に行かせて邪魔をしたって…。
待ち合わせ場所に来なかった永瀬を追究しないだろうと、里緒の性格を見越してついた嘘。



「俺がはっきり答えを出せば、光莉も…里緒も、傷つけることなんてなかったんだ。」


目の前にいる男は、本当に永瀬なのか？
ついさっきまで、俺に見せてくれた優しい笑顔は微塵もない。
辛く、今にも子どもみたく泣き出してしまいそうな顔だ。