神人

「あ、あの…」
しかし返事はない。本当に生きているのか？ヘウ"ンはもう少し近付き、
「あの、バース様」
「ん…」
生きていた。バース様はゆっくりと顔を上げ、眠っていたのか目が睡眠を要求している。
そんなバース様の目にヘウ"ンは吸い込まれていた。
彼女の目は光の加減で銀色に見える。透き通るガラスのような目を見て、この人は本当に神から生まれてきたんじゃないかと思う。
「あんた誰…」
バース様に見とれていたヘウ"ンは慌てて姿勢を正し、
「私は今日から神子になるヘウ"ンと言います。ナスカさんに起こしてきてほしいと頼まれまして」
「ああ、ばばあに頼まれたんだ…」
「は？」
今何か変な言葉を聞いたような。彼女には似つかわしくない…。
だがバース様は特に言い直しもせず、両手を繋いでいる鎖をガチャガチャ言わし、
「これ、外しに来てくれたんじゃないの？」
「あ、はい！」
ナスカさんから預かった鍵をポケットから取り出し、鎖を外した。
五年間繋がれていたバース様の手首には、鎖の跡がくっきりと付いていた。バース様は治癒の力で跡を消した。