「失礼します」 「どうぞ、お掛けになって」 「はい」 初めて入る学長室に、ドキドキする。 「単刀直入に言うわ。あなたの翻訳した本を出版してみない?」 時間が止まった。 学長が何を言っているのか分からない。 「聞こえてるかしら?」 「あっはい・・どういうことでしょうか?」 「あなたの作品が、コンクールの最優秀作品に選ばれたの。私にとってもとても名誉なことよ。その選考に携わった出版社の方が、ぜひ出版したいと言ってくださったの」 「出版って・・私の本が書店で売られるってことですか?」