あの時、木村が潜り込んだストレッチャーは、もともとこのバチスタ手術の患者を運ぶ為に用意されていた物だったのだ。


それを、患者の顔をよく知らない看護士が、既にストレッチャーで眠っていた木村を患者と勘違いして、そのまま麻酔室まで運んでしまったのが全ての間違いの原因であった。


「ど~すんだよ…コレ…」


術後の処置室で、何も知らずに眠っている木村を見つめ、苦々しく呟く浅田。


幸いしてこの不祥事は、手術に立ち会った外部の人間にはまだ気付かれていなかった。


もし、外部にバレたら、病院自体の存在さえ危ぶまれる大不祥事に発展するのは確実であろう。


チーム・バチスタは、今後の対策について話し合った。


「とりあえず、謝罪するしか無いでしょう。
悪いのは我々病院側なんですから」


と、正論を述べる田中。


「しかし、『ごめんなさい』で済む話じゃないしな……」


「すっとぼけてその辺の通路にでも寝かして置くか♪」


「そりゃマズイ!手術痕だって残っているのに、後でバレたらそれこそ訴えられる!」


チーム・バチスタの間に重苦しい空気が漂う。



そして、暫くして浅田が呟いた。


「やっぱり、金で解決するしか無いか……」


結局、浅田の意見に皆が同調する事となり、浅田はチーム・バチスタの全員から金を集め、それをもとに木村と交渉を進めようという事になった。