「ハァ……」
「ハァ……」
「ハァ……」
傷口を縫合し、何とか最悪の事態だけは防いだが、落ち着いてその部分をよく見ると、それはなんともお粗末な仕上がりであった。
「なんだよ田中……これ、心筋が中に折り込まれちまってるじゃねぇか……下手くそな縫合だな!」
心筋の“縫いしろ”があまりに広すぎる為に、重なり合った心筋が中に埋まるように折り込まれてしまっている。
「え~~え~~!どうせ僕は下手くそですよ!
浅田センセイみたいには上手く出来ません!」
自分の施した縫合を馬鹿にされ、すねる田中。
しかし、浅田はそんな田中の肩をポンと叩いて、にっこりと微笑むのだった。
「だが……
………それがいい!」
「アンタは前田慶次かっ!」
「見ろ田中♪
お前の不細工な縫合のおかげで、心臓のサイズが小さくなった。
これなら、心筋の変異部分を切除する必要は無いって訳だ♪」
「えっ?・・・・・」
偶然が生んだ奇跡。
この瞬間、チーム・バチスタは日本医学界に新たなる躍進の一歩を刻む事となった!
その名も
『新・バチスタ術式』
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