ある日のこと、私は自分の指を損じた。
仕事中のことだった。

指がなくては、今までの荷役作業が、出来ない。
明日から、どうしよう、、あせる気持ちで、試しに 荷を掴むと、血だらけにはなるが、持てた。。。。
いやその前に、
積み込んだ荷物を届けなくては、、、と、
握るハンドルは血だらけになった。
どうせなら、意識などなくなればいいのに、、、
こんなときに限って、私の思考回路は、全開だった。
公衆電話から、、、救急車を呼び、会社の上司にも、連絡をしていた。。。。

しばらくたって、労災が下りた。
私の指は、、、けっこうな価値だった。
ギターを弾けなくなった代償は、、、
意外にも、高価だった。
そんなには、上手くなかったのにね。

とにもかくにも
しばらくの病院通いとなった。当然のことながら、
病院への、バスは、病人でいっぱいだ。
席が足りないときは、、自然 譲る身分だ。
なにしろ、自分の不都合は、左手だけなので、
進んで、立つように心がけた。

だけど、ここに 私の悪意が、目覚めてしまう。
普段は、ポケットに潜ませてる左手で、
吊革を持ち、譲る席の方の目の前に、
立つことに決めた。
「あ、、、」すまない気持ちを表すのは、譲られた病人さんで、
回りの健常者さんの視線が向けられることはなかった。