春とは思えない寒さだった


20歳になり、初めて寂しい夜を過ごす―――…。

桃の花が散りそうな、そんな日だった。


「……宏太……」


ふっと漏らしたこの言葉は、最愛の人の名前だった


桃の花が咲く季節に出会い、そこから何年も経過していき―――…

そして、桃の花が散る季節に別れた。

すごく最近のことで、今でも覚えている



あなたと手を繋いだときの温もり

あなたに抱きしめてもらったときのやわらかさ

あなたから重ねた唇



すべて…すべて私の心の中に、思い出になって残っています―――…。