ー孤独ー

斉藤君と電話した日から学校でも時々話すようになった。
「万里~ばいば~い」
「ゆかばいばいッ!!」
そして今日も学校が終わってしまった。
私は学校が終わるたびに、ゆかと別れて一人になるたびに孤独になる。
家なんか帰りたくない…
私の家は母子家庭で父親はどこか遠くにいる。
おそるおそる家に入る。
母がいた。
私は急いで階段をあがる。
「ちょっと待ちなさいよ!!」
「なんだよ!!くんなよ!!」
怖い…母が怖い…。
父と離婚してこの地につれて来られて、母はずっとこうだ。
私を軽蔑している。私を嫌っている。
消えてほしいのかな…
こんな所にいたくない。誰か…助けて…。
今までずっとこんな恐怖と闘ってきた。
三年間こんな思いをしてきて…もう限界だった。
私の左手にはたくさんの傷がある。
これしか方法がなかった。
私は家を出て街を歩いた。
苦しくて、つらくて、私は泣いていた。
「あれ?高杉?」
そこには斉藤君がいた。
「なんで泣いてるの?」
「…なんでも…ない。」
私は出てくる涙を必死に止めようとした。
「ちょっと来て」
そう言って斉藤君は私の手を引いて行った。
そこは公園だった。公園の中には赤いベンチが一つあった。
斉藤君はそこに私を座らせて、こう言ってくれた。
「俺、力になりたいから…なんでも相談しろっ!!今は泣いていいよ。」
それから私が泣き止むまで斉藤君はずっとそばにいてくれた。
赤いベンチは温かかった。