「お父さんは不器用な人だから。
2つのことが出来ないみたいね

仕事してるときは、
それしか見えないのよ」





くすくす笑いながら、
「ね?」とあたしに同意を求めてくる。




「必死で話す菜子を、
いつも嬉しそうに見てたわ。

まっすぐだから、あんた」


「それ言われた・・・・・」


「そう? でもね、菜子。
まっすぐっていいと思わない?」




涙をすすりながら、
首をかしげる。


だって、まっすぐでいいことって
見つかんないんだもん。




まっすぐ=単純なんだもん。


あたしの中では。




眉をひそめると、
お母さんはふっと笑って。




「人の心を変えられる。
言葉がまっすぐ、その人に届く」





「なかなか簡単に出来ないでしょ」
そう言って笑ったお母さん。






でも、あたしの涙腺は限界だった。