振り返ると、
2つの鞄を肩からかけた譲輝くん。
手には、
あたしの携帯が握られている。
その譲輝くんの姿を見て、
何もかも置いてきてしまったことに気が付いた。
「ご、ごめん。ありがと・・・・」
鞄を受け取って、
携帯があたしの手に渡ったとき。
まるで見ていたかのようなタイミングで、
あたしの携帯が着信を表示した。
通話ボタンを押し、
ゆっくりと耳につける。
「もしもし、・・・・・・・そっか。
ううん、わざわざありがとう」
電話の相手は、
お母さんだった。
用件は、
お父さんの出張が今日になったこと。
ついさっき。
家を出たと教えてくれた。
やっぱり。
願ったもの全部、
あたしの手をすり抜ける・・・・・

