いつもそうだった。
手に入れたと思っても、
いつしかあたしの手をすり抜けて
あたしの元を去っていく。
幼稚園の父親参観も、
小学校の運動会も。
お父さんとの約束は、
いつもいつの間にかなくなっていた。
必死にお願いして、
必死に約束まで取り付けた。
でも――――。
頑張って話してたあたしの言葉は、
お父さんからしてみれば
“その場しのぎの繕った言葉”
―――だったんだ。
継ぎはぎだらけのあたしの話は、
きっと誰も聞いてくれない。
惨めさ、弱さが、
全部一緒になっていたたまれない。
「――――おい」
背中から聞こえた、
あたしを呼ぶ声。
振り向かなくったって、
声だけで誰なのかがわかった。

