指折り★Holiday





「アレからあたし、ちゃんとしてたの!
いい子にしてた! だから大丈夫だよ!」




お兄ちゃんの足は、
止まるどころかどんどん早歩きになってる気がする。





「待って、お兄ちゃん!」


「いい加減分かれよ!!」




急に大声を出したお兄ちゃんに、
身体がビクッと強張った。



振り返ったお兄ちゃんの目は、
冷たく、どこか寂しさを訴えているような目だった。




「お前がどんなにいい子にしても、
あの人がお前を見たことはあったか?
話を聞いたことはあったか?


お前のは、綺麗ごとだよ。


ダメなんだよ。
お前の事も、母さんのことも、
俺の事も考えちゃいない。


あの人は一生懸命に
自分の事だけを考えるんだ。

なにをしても、言っても、
ダメなんだよ・・・・・・」




スッとあたしから顔をそらすと、
お兄ちゃんは人ごみの中へ消えてしまった。




もう、追いかけることも出来ない。



出来なかった。




“あの人がお前を見たことはあったか?”




お兄ちゃんの言葉が、
矢のように胸に刺さる。