携帯をベンチの上に放り出し、
必死に背中を追いかけた。
「お兄ちゃん!!」
もう1度大きな声で呼んでみると、
振り返った人はやっぱりお兄ちゃんだった。
足を止めたお兄ちゃんの腕を取り、
満面の笑みで笑いかける。
「こんな長い間どこにいたの?
お母さんもすごく心配してるよ。
あとね、お父さんとも話したんだ!
今度話を聞いてくれるって!!
だから、お兄ちゃんも一緒に・・・・」
「マジで言ってんのか、菜子?」
――――え?
あたしの笑顔が固まる。
あたしの腕を解いて、
無表情のままお兄ちゃんは続けた。
「あの人が約束なんて
・・・・・・守ったことあったか?」
フッと笑うと、そのまま
あたしを置いて歩き出してしまった。
「待ってよ! ちゃんと約束したよ?
“話聞く”って! 本当に言ったよ!!」
追いかけて、
どれだけ話しかけても、
お兄ちゃんの足は止まらない。

