いつもは眠たそうに開けられた目が、
今はパッチリと存在を主張している。
あんまりずっと見てくるもんだから、
思わず視線を外してしまった。
「えと、どういう状況で言われたの?」
たどたどしくならないよう、
精一杯普通に切り出した。
そんなあたしに気付くこともなく、
譲輝くんはすらすら言葉を並べる。
「俺。ちっちゃいとき、
自分の名前が嫌いだったんだ」
「えー、かっこいいじゃん」
「同じ幼稚園にさ、
“ゆずちゃん”っつー子がいたんだよ」
「あ、わかった。
それでからかわれたりした?」
まぁねって言いながら、
苦笑いして元の体勢に戻った譲輝くん。
「毎日、毎日。
ゆずきちゃんゆずきちゃん言われて。
かーさんに聞いたら、
親父が名前考えたって言うから詰め寄ってさ。
したら言われたんだよ」
視線だけあたしに向け、
どこか嬉しそうに
「譲輝の由来は“譲らない輝き”だ。
お前もなんか1こでも、
誰にも負けないもん作れってな。
親父にそう言われたら、
なんかこの名前がかっこよく思えてきたよ」

