1歩大きく足を踏み出したけど、 ぐっとその場で足をとめる。 待て待て。 落ち着け、菜子。 切れる息を整えて、 大きく3回深呼吸。 よしっ! 自分で自分に喝をいれ、 ゆっくりとした歩調で譲輝くんに近づく。 譲輝くんまで残り5メートル! ってところで、見つかった。 最初は視線だけあたしに向けたけど、 大きく目を見開くと顔ごとあたしのほうを向く。 「ど、どうも」 ぎこちない笑顔で微笑むと、 何もなかったかのように顔をそむけられる。 「何?」