今まで甲羅に引っ込んでた亀が、 首を伸ばしたみたいに顔をあげる。 一瞬しか見えなかったけど、 あれは確かに譲輝くんだった。 だけど、あたしは座ったまんま。 今更行ってどうするの? 譲輝くんに会って、 何を言うつもりなの? ぐるぐる、ぐるぐる。 想像だけが、 頭の中を駆け巡る。 視線の先の携帯。 進まない時刻。 帰りたくない家。 迷いは、一気に消えた。 トレーを掴んでゴミを捨て、 携帯を鞄に投げ入れ走って外へ出る。