彼はニヤリと笑うと、私の手を引っ張ったまま歩き始めた。


その時、鞄の中に入れてた携帯がブルブル震えたのがわかった。


その場に立ち止まる。


私が立ち止まったから彼も立ち止まった。


そしてこっちを向くと不機嫌そうな顔をしながら私を見た。



「携帯が……」


「はぁ?そんなん後でもいいだろ?」



明らかにイライラしてる。


彼の手が一瞬、緩んだ隙に手を離した。



『もしかしたら親からかもしれないから待ってて?』



そうメモ帳に書いて彼に見せた。



「チッ!」



彼はコートのポケットからタバコを取り出して、1本口に咥えるとタバコを吸い始めた。