「僕は何もしてませんが……」


「いや、君はハルの彼氏になってくれた。家内も喜んでた」



お父さんはそう言うと、ビールを一口飲んだ。


そして、話を続けた。



「ハルが生まれて、聴覚に障害があることがわかった時に、私ら夫婦はハルの恋愛や結婚や出産は諦めたんだ」


「えっ?」



目線をビールの缶からお父さんの方に移した。


お父さんはビールの缶をじっと見つめたままだった。