居酒屋に入り、杯を交しつつ、話してみると俺は意外と楽しかった。
10も歳が離れていると言うのに話題がずれる事も無く、二人の会話は弾んだ。
店を出る頃には、すっかり深沢は酔っていた。

「おい!大丈夫か?」
「大丈夫ですよ~」

語尾をのばす事に変わりは無かったが、ろれつが回っていないのは明らかだった。
そんな深沢の手を引っ張り、俺は駅へと向かった。
目の前には、深沢に声を掛けられた信号。
青信号は、赤に変わり待たされる事になった。

(嗚呼、こんな事なら一人で呑めば良かった。)

信号に目をやりながら、心の中で俺は呟く。
やがて、信号が赤から青に変わるその瞬間・・・

「ねえ、先輩?」
「ん?」