あれは、今日みたいに暑い日の事だった。
久し振りに定時で仕事を終えた俺は
行きつけの居酒屋に立ち寄って帰ろうと思っていた。
目の前の信号が変わり、歩き出そうとした まさに、その時だった。

「河野先輩~♪」

振り返ると新入社員の深沢が居た。

「お前も今帰りか。」
「はい。先輩もですか~?」

ゆっくりとした口調で
語尾を上げるこの子の今風の話し方が
俺は苦手だった。

「久々に早く終わったからな。呑んで帰ろうと思ってな。」
「えっ!?呑みに行くんですか~?」
「そうだけど?」
「私も連れてって下さいよ~」
「いいよ。行こう。」
「やったぁ!」

無邪気に笑うその顔がなんだか俺には可笑しかった。