車の中は無言だった。
桐島はずっと外を向いたまま。

まずい…ど、どうしようか…。そんなに怒らせたのか?

「…なぁ…桐島。…悪い、そんなに怒るとは思わなくて…」

強引にしてすまなかった、とびくびくしながら謝ると桐島がこちらを向いた。


「……へ?…何で私が怒るんですか?……私の方が迷惑かけてるのに…すみません…」

桐島は不思議そうな顔をしたあと、また俯き謝ってきた。


…え!?怒ってねぇの!?

「なんだよ…マジで焦った…」

ホーッと安堵の息を吐くと、桐島がクスッと笑う。

「…そんなに怒ってるように見えました?」

誤解ですよ、と笑いながら言う。

「だって顔背けたままこっち向かねぇから。…俺のことそんなに見たくねぇのかなって…」

本気でそう思った。


それは……、と桐島が口ごもっている。

「…少し…照れてしまって…」

先生優しいから、と照れながら笑う桐島の言葉に不覚にもボンッと顔が真っ赤っ赤になる。


そんな不意討ちっ……。抑える自信ねぇぞ?