「桐島、車で待ってろ。黒のランクルだ」

一回乗ったことあるから分かるかもしれないが、念のためそう言って車のキーを手渡した。俺が誰かに自分の物を預けるなんてあり得なかったが、桐島には何のためらいもない。


「………分かりました」


少しムクれた表情で言う桐島に笑う。こうしてもっと色んな表情を見せて欲しい。



桐島には先に駐車場へ行かせ、俺は職員室で帰る準備をする。

早く桐島の元へ行きたい、そう思い急いでいると、空気を読まない栗原先生が声をかけてきた。

「あれ〜?三神先生ぇ、もうお帰りですかぁ?」

うっとおしい!!
振り向きもせず、はい、と必要最低限の返答をした。

「…じゃあ私も帰ろうかな?」

勝手に帰れよ。
無視して片付けを進める。

「…三神先生、一緒に、帰りませんか…?」


……はあ?帰るかよ。

片付け終わり、鞄を持って栗原先生に向き直った。パチパチと瞬きしながら上目遣いでこちらを見ている。
……おいおい、デコにシワ寄ってんぞ。



「…すみません。今日は大事な女性を待たせてるんで」

それでは、と口をあんぐり開けたままの栗原先生を残して職員室をあとにした。