「ど、どうした?」

必死で動揺を隠し、用件を聞く。

「すみません…さっきのここの部分なんですけど…」

先程の授業でした内容について、分からないことがあったらしい。


「あ、あぁ。それは…」

教科書を指差し、説明してあげる。
2人共教科書を覗き込んでいるので、距離が近い。


…ヤバい…ヤバい…ヤバい…
教えながらも、頭の中はその言葉でいっぱいになる。

手を少し伸ばせば、すっぽりと抱き締められる距離だ。

…ダメだ……銀次、我慢しろ…

そう言い聞かせ、なんとか乗り越えた。


「そっかぁ…なるほど」

桐島も俺の説明で納得したみたいだ。
早く退散しなければ…もたない。

じゃ、と帰ろうと顔を上げる。


「三神先生、ありがとうございました」

そうお礼を言いながら、ニコッと微笑む桐島がいた。




―――――――ズッキューン…!!


そのまま桐島は去って行ったが、その笑顔にやられてしまい動けなかった。


フラフラと壁に寄り、手をつく。
今、誰かに見られるとヤバい…。
……顔が真っ赤だ。



………………中学生か、俺は。