そして、4月―――…。


「いいか?変な男に声をかけられても相手するなよ?サークルなんて入らなくていい。どうしても入りたいなら女子しかいないところに入れ。それから、合コンに誘ってくる女とは友達になるな」

「もう…何回目ですか…」

「心配なんだよ」


教師の任務を終え、休む間もなく俺は会社に戻った。企業人としての勘を取り戻しながら毎日激務に追われている。

結衣も見事志望大学に合格し、この春から大学生だ。

今日はその入学式。
もちろん、心配性の俺は大学まで一緒に行くと、嫌がる結衣に付いて行った。


「何かあったらすぐ俺に連絡しろよ?すっ飛んで行くから」

「何言ってるんですか。ちゃんと仕事してください。何かあったとしても自分で何とかしますから」


うんざりとした表情で先を歩く結衣を追いかけ、その手を握りしめた。

…ったく、相変わらずだな。全然俺を頼ろうとしない。


やっと手に入れたと思っても、油断するといつの間にかするりとすり抜けている。本当に気が気じゃない。


でも、すり抜けても、何度でもまた掴まえに行く。離すもんか。

結衣に対しては底なしの愛情を自覚し、思わず苦笑を浮かべた。


「……何笑ってるんですか?」

「いや、何でも」


怪訝な表情で俺を見つめる結衣に微笑みかけ、その柔らかな頬にキスをした―――…。






★END★