「帰ろう、結衣」

間近にあるその顔を見つめながら優しく声をかけるが、結衣は俺に抱えられているこの状態が耐えられないようで、ジタバタと暴れ出している。


「やっ…!!やだっ!!もう立てますから降ろして!!やだ!!」

その尋常じゃない嫌がりっぷりに、親父がざまあみろと言わんばかりにププッと楽しげに含み笑いしている。


このクソ親父が…どこまでも腹が立つ…!!

ジロリと親父を睨みつけながらも渋々結衣を降ろすと、おふくろが結衣の手を取りながら心配そうに声をかけた。


「本当にごめんなさいね…。ほら!!あなたも謝りなさい!!」

「す、すまんかったな結衣さん…。ちょっとやりすぎてしまって…」

「い、いえ!!私の方こそすみません…」


2人から謝られて結衣も困ったような表情で小さくなっている。

本当なら親父には土下座くらいしてほしいが、それは結衣が本気で嫌がりそうなので言うのはやめた。



「大丈夫か結衣?歩けるか?」

頼りない足元を気遣い、腰を支えるように抱き寄せるが、それさえも結衣は恥ずかしいのか「大丈夫ですから…!!」と嫌がり離れようとする。

しかし、今度は離さないようにしっかりと腰に手を回し、嫌がる結衣を無視した。