ついに来たか…。

親父の書斎の前で足を止め、深呼吸した。

結衣の身体も先ほどとは比べものにならないほど硬く緊張している。

繋いでいる手を握り直し、コンコンとノックした。


「入れ」

すぐに返ってきた短い一言にゆっくりと扉を開けると、書類に目を通しながら仕事をしている親父が目に入った。


「連れてきたか…って、銀次!?」

部下だと思い込んでいたのか、顔を上げたら俺だったということに親父はギョッと驚いていた。


「やってくれたな、親父」

「お前が来るとは…。あいつら全然使えんな」

やれやれといった表情で親父は書類を机に置き、「まあいい」と立ち上がりながらこちらに向かってきた。


「君が桐島結衣さんだね?はじめまして、銀次の父です」

俺たちの前で立ち止まり、結衣に向かって威圧感丸出しで挨拶をしてきた。


「は、はじめまして…桐島結衣です…」


それに、結衣も声を震わせびくびくと緊張しながらも返した。