「結衣、俺だ。もう大丈夫だから」


チャイムを鳴らし玄関先で声をかけると、中から結衣が不安そうな顔をのぞかせた。
そして、俺だと確認したあとホッと安心したように家から出てきた。


「あの人たち、誰だったんですか…?」

「ごめんな…あいつら、うちの会社の奴らだ…」

「なんで先生の会社の人たちが…?」


怪訝な顔をして俺に訊ねている結衣の手を引き、車に乗せた。


「行くぞ」

「え?行くって…どこに行くんですか?」

「俺んち」

「先生の家?」

「ああ」


こうなったら、何かされる前に直接結衣を連れて親父の元に乗り込んでやる。


硬い表情で運転する俺に、結衣はまた怪訝な顔をして聞いてきた。

「でも先生のうちって、逆方向じゃないですか…?」

「あ、実家の方だから」

「実家…?え?えぇっ!?」

まさか実家だとは思っていなかった結衣が、どうして!?と慌て出した。