ま、まずいぞ…。

今度こそ親父は結衣に何かするつもりだ。

最後のあの楽しそうな顔…。昔から俺たち兄弟に無理難題をふっかける時によくしていた顔だ。もはや苦しめて楽しんでいるとしか思えない。

あのあと急いで親父を追いかけたが、一足遅く逃げられてしまった。もちろん電話も通じない。

結局家に帰る気になれず、再び試験会場まで戻り結衣の試験が終わるまで待つことにした。



そして、数時間が経過した頃、続々と受験生らしき学生の姿が見え始めた。

どうやら終わったみたいだ。
すかさず携帯を取り出して結衣に電話をした。


「結衣、終わったか?今どこにいる」

『先生?今ちょうど会場から出るところですが…』

「分かった。すぐ行くから、そこで待ってろ」

『えぇ!?ここに!?』


驚いている結衣に構わず電話を切り、急いで会場に向かった。

受験生の群れをかき分け会場付近にたどり着くと、出口に結衣が立っているのが見えた。


「結衣!」

遠くから呼びかける俺の声に気付いたようで、結衣がこちらに向かってきた。