「親父こそしつけえんだよ!!生徒に手を出したって世間にバレたところで、どうせその頃には卒業してる。どうにでもできる」

「このアホが!そういう問題ではない!!それに、あの娘は三神にふさわしくない。悪いが銀次、色々と調べさせてもらった」

「……ふさわしくないってどういうことだよ」

「分かるだろ。うちとはまるで釣り合わない」


出た…大企業ならではのしがらみ…。

いい加減、そういう古くさい考えは捨ててほしい。歯がゆさを感じながら頭を抱える俺に、親父は続けて言う。


「どうせうちの金目当てだろう。経済的状況を見て、そうとしか思えん。厄介なことになる前に手を切れ」

「てめっ!!いい加減にしろよ!!」

一体結衣の何を調べたんだよっ!!どこをどう見たらそんなこと思いつくんだ!!結衣ほどつつましい女はいないというのに!!


「ふざけんなよ…結衣はそんな女じゃない…」

静かに怒りを含ませながら言う俺に、親父は「どうだか」と鼻で笑う。


「とにかく、今日は最終宣告に来た。あの娘を傷付けたくないなら、さっさと別れることだな」

「ちょっ…!!待て!!」


そう言いながら親父はニヤリと笑って席を立ち、俺の声に一度も振り返らないまま店を立ち去った。