着いた場所は古びた喫茶店。土曜日の午前中ということもあり、店内はガラガラだった。

「今日は試験だそうだな。律儀に送迎しおって…お前はあの娘の使いパシリか」

「俺がそうしたいだけだ。どっかの誰かさんが悪知恵を働かせてるようなんでね。1人にさせたくない」

「フン…やはり気付いておったか。どうりでガードが固い。ベッタリ張り付きやがって」

お互い睨み合いながら話していると、ウエイトレスが遠慮がちにコーヒーを運んで来た。
それを一口飲み、心をできるだけ落ち着かせた。

「で?今日は何?」

「ワシの用件など1つに決まってる。あの娘と別れろ」

「言っただろ、別れるつもりはない」

即答する俺に、親父は眉間のシワをグッと深めた。

「何企んでるのか知らねえが、結衣になんかしたら許さねえからな。どうせ汚い手口でも使うつもりなんだろ」

「言っとくが、銀次。道理から外れているのはお前の方だ。教え子に手を出す教師がどこにいる!!」

「うるせ!どうせ教師なんてあと少しで終わる!!道理もクソもねえよ!!」

「お前という奴は…!!」

やはり、お互い冷静に話し合うことなんてできず、静かな店内で声を張り上げていた。